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「エクス・マキナ」はサイバーパンクか、SFホラーか!?


以前から気になっていたが、見れてなかった映画がある。
吹替版がAmazonプライムビデオ対象になり、盆休みを利用してやっと見ることができた。
「エクス・マキナ」だ。

注)このあと一部ネタバレになる記述がある。気になる方は先に映画を見てからどうぞ…

エクス・マキナ

ストーリー

大手検索サービス企業「Blue Book」でプログラマーとして働くケイレブは抽選で当選し、社長のネイサンの自宅に招かれることになる。
ネイサンの自宅は人里離れた山奥にあり、ケイレブはヘリコプターで向かった。

巨大な邸宅に見えたネイサンの自宅は、研究施設であることにケイレブは気づく。
そこではネイサンがひとりでAIの研究をしており、ケイレブはAIのチューリングテスト(AIかどうかを判定するテスト)をするために呼ばれたのだった。

機密保持契約書にサインし、ケイレブはAI搭載の女性型アンドロイド “エヴァ” と対面する。
チューリングテストを続けるうちに、ケイレブはエヴァに心惹かれていく。
やがては初期化される運命のエヴァを施設から救出すべく、ケイレブは画策するが…

ケイレブとネイサン、エヴァと施設内で給仕を務める女性(?)キョウコの4人だけで物語は進む。
舞台もほとんど施設内だけの密室劇だ。

感想

結果からいうと、非常に面白かった。
ネットの評価も高かったので、見る前からハードルは上っていたのだが、そんなハードルは難なく飛び越えるくらいの作品だった。
僕自身、このテの作品が好きということもあるが。

顔と手足以外がスケルトンになっているエヴァを、最初は不気味に感じながらも少しずつケイレブは惹かれていくわけだが、それには理由があった。
ケイレブが「Blue Book」で検索した内容、好みの女性像から性的指向までをデータ化し、エヴァのアイデンティティは形成されていたのだ。

このデータ収集は「Blue Book」のモデルと想像できる某大手検索サイトやSNS企業が、現時点で実際に行っていることだ。
さすがにAI搭載女性型アンドロイドに使われることはないだろうが、PCやスマートフォンで自分が求めている検索結果やCMが表示されるのと同じ仕組みだ。
そういう意味では、すでに別の形でエクス・マキナの時代は始まっているのかもしれない。

ケイレブ自身も、自分もアンドロイドではないかと不安になり、自らを傷つける。
結果、血液が溢れ出し人間だったように見えるが、傷つけているあいだも痛みを感じている様子はない。
果たしてケイレブは人間だったのだろうか…

こういう作品を見ると、僕はいつも平井和正の「アンドロイドお雪」を思い出す。
いわゆるセクサロイドもので、これもロボットと人間、どちらがどちらか倒錯する小説だった。
「アンドロイドお雪」をSF版牡丹燈籠と評した人がいたが、エクス・マキナもどこかそんな雰囲気、不気味さを感じなくもない…

(それにしても角川文庫版のこの表紙イラスト、盛大なネタバレになってるんだけど大丈夫なのか…)

まとめ

“攻殻” ファンの友人とハリウッド版GHOST IN THE SHELLを見に行く予定にしていたんだけど、都合が合わず見に行けなかった。
今回エクス・マキナと合わせてAmazonビデオでレンタルして見たのだけど、結果的にはわざわざ時間を作って劇場に足を運ぶ必要はなかった作品だということが分かった(特に予想どおり北野 “ビート” たけしの荒巻が最悪!)。

むしろエクス・マキナの方が、本来の押井版GHOST IN THE SHELLのエッセンスを多く含んでいるように感じた。
ラストシーン、人混みに消えていくエヴァが「外界(ネット)は広大だわ…」といえば良かったのにね…