すでに始まっている未来!? 仮想通貨世界を描く、藤井太洋「アンダーグラウンド・マーケット」


異常な乱高下が話題になり、良くも悪くも一般化されつつある、Bitcoin(ビットコイン)を代表とする仮想通貨。

イマイチどういうものか分からない人も多いようだが、4年半も前に仮想通貨が一般化されつつある社会を描いた小説がある。
藤井太洋の「アンダーグラウンド・マーケット」だ。

スポンサーリンク

アンダーグラウンド・マーケット

舞台は2018年の東京(来年だ!)。
相次ぐ増税は地下経済の発展を促し、日本は表と裏、地上と地下の2つの経済構造を持つ国になっていた。
地下経済の商取引では仮想通貨による電子決済が一般化し、当局に把握されないため、あらゆる税を免れることができる。

主人公の巧は、デザイナーの鎌田とプログラマーの恵とチームを組み、企業の闇案件を引き受けるウェブ関連の便利屋だ。
報酬はすべて地下経済の仮想通貨で受け取っているフリーランスは、彼らの蜂の巣のような狭い住居から “フリービー” と呼ばれている。
移民や難民であふれかえった国際都市(?)東京で、巧たちは地下経済ゆえのトラブルに見舞われる…

アンダーグラウンド・マーケット シリーズの相互関係

アンダーグラウンド・マーケット シリーズ(?)のKindle本は、現時点(2017/7/30)で4冊ある。
ふつうなら順番に話は進むのだが、そういうわけではなさそうだ。
リリース順に整理しておこう。

UNDER GROUND MARKET

Kindleストアのセルフ・パブリッシング(主にネットによる自費出版)で発売され、素人離れした文体とストーリー展開で藤井太洋の名を一躍有名にした「Gene Mapper」に続く第2作品。

価格108円の短編で、サクッと読むことができる。

少々短くて物足りなさを感じるが、本編と同じくらいのボリュームがある解説、林智彦による「『藤井太洋』の取扱説明書 ーポスト「3・11」の現実の更新」は初期の藤井太洋論として読み応えがある。
(2013/2/1出版)

UNDERGROUND MARKET ヒステリアン・ケース

前作の読者は違和感を覚えるかもしれない。
プログラマーの恵が、まだメンバーになっていない。
そういう意味では、前作「UNDER GROUND MARKET」の前日譚といったところだ。

ただ前日譚とはいえ中編程度のボリュームがあるので、この作品からアンダーグラウンド・マーケット シリーズが本格的にスタートしたといって良いだろう。
(2013/11/7出版)

UNDERGROUND MARKET アービトレーター

前2作を読んだ人は、さらに混乱するかもしれない。
第1作で巧たちを窮地に追い込んだ人物が、初登場として描かれている。
読み進めると、さらに既視感を感じ混乱する…

読み終わって初めて気づく。
これは第1作の「UNDER GROUND MARKET」を下敷きとし、大幅に加筆修正した作品だ。
そういう意味では、藤井太洋の処女作「Gene Mapper(-core-)」と「Gene Mapper -full build-」の関係に近いかもしれない。
ただしボリュームだけでなく、ディテールやストーリー展開も、ほとんど別モノともいえるくらいになっている。
(2014/3/27出版)

アンダーグラウンド・マーケット

実はこれは未読。
ただサンプルをダウンロードし、目次を見てみると、

    第1部 ヒステリアン・ケース
    第2部 アービトレーター

になっているので、第2作と第3作の合本になっているようだ。
未読なので加筆・修正が行われているのかは不明。
これは朝日新聞出版から紙の本、単行本と文庫本としても販売されている。
(2016/7/7出版)

まとめ

まとめて読みたい人は合本の「アンダーグラウンド・マーケット」を、セルフ・パブリッシングにこだわりたい人は「UNDERGROUND MARKET ヒステリアン・ケース」と「UNDERGROUND MARKET アービトレーター」を購入すれば良いだろう。

第1作の「UNDER GROUND MARKET」は「UNDERGROUND MARKET アービトレーター」と、ほぼ同じ内容なので読まなくても良いかもしれない。
ただし藤井太洋マニアにとって、林智彦の解説は必読だ。
108円なので、これを読むだけでも相応の価値はある。

いずれにしても、もうそこまで来ている仮想通貨時代に備えて、とはいわないが読んでおいて損のない物語であることは間違いない。
それにしても、続編はないのかな…

[文中敬称略]


こちらの投稿もいかがですか

今だから読むべき小説! 藤井太洋「ビッグデータ・コネクト」
久しぶりに寝る間も惜しんで小説を読んだ。 おかげでここ数日、寝不足だ。 最近は本を読むたびに睡魔に襲われていたんだけど、この小説...
スポンサーリンク