三度の飯よりサイバーパンクが好き！
そんな僕が敬愛してやまない作家、ウィリアム・ギブスン。
初期の短編集や「電脳三部作」はKindle化されている。
しかしそれ以降の作品は、長らくKindle化されていなかった。
それが一気にKindle化されたようだ。
ヴァーチャル・ライト
「電脳三部作」に続く「橋三部作」の第一弾。
「電脳三部作」より現在に近い、近未来のサイバーパンク。
巨大地震「ゴジラ」に襲われ、倒壊したサンフランシスコ。
スラム化したベイブリッジを舞台の中心に、ヴァーチャル・ライト争奪戦が始まる…
ヴァーチャル・ライトとはVRグラス。
視神経に直結する、軽量化したApple Vision Proのようなものか。
ギブスンは30年以上前に、これを予見していた？
ヴァーチャル・ライト
ウィリアム・ギブソン
あいどる
「橋三部作」の第二弾。
舞台は大地震後の東京。
世界的人気ロックバンドのヴォーカル レイが、ネット上のバーチャルアイドル投影麗との結婚を宣言。
これには何らかの陰謀があると考えたバンドのマネージメント会社は、ネットに詳しい人間を呼び寄せる。
バンドのファンやロシアン・マフィアを巻き込み、事態は思わぬ方向に進展する…
バーチャルアイドルとは初音ミクか、ブレードランナー2049のジョイか。
もうひとつの舞台がバーチャル空間「城砦都市」。
バーチャルアイドルといいバーチャル空間といい、今のネット社会を予見したような物語だ。
ちなみに、アイドルの正しい綴りは “Idol” だが、この作品のタイトルは “Idoru”。
日本の文化、アイドルに合わせて綴を変えたという。
タイトルをカタカナではなく、ひらがなにしたのは訳者の浅倉久志氏のセンスだ。
あいどる
ウィリアム・ギブソン
フューチャーマチック
「橋三部作」の最終話。
舞台は東京から、再びサンフランシスコへ。
ドラッグの後遺症で複雑に絡み合うネット上から、結束点を見出すことができるようになったレイニー。
その中で歴史が変わる大転換を発見する。
友人のライデルに調査を依頼するが、ライデルは何者かに命を狙われる…
前二作の主要人物多くが登場する。
フィナーレに相応しい作品だ。
原題はAll Tomorrows Partiesで、アンダーグラウンド・ライブ・イベントの名称。
邦題のフューチャーマチックは、リューズのない自動巻き腕時計の名称。
時計は作品内でも主要アイテムとして登場するけど…
フューチャーマチック
ウィリアム・ギブソン
パターン・レコグニション
「ビゲンド三部作」の第一弾。
新製品の売れ行きを直感的に判断することができる、クールハンターのケイス。
新たな仕事は、ネット上に突然アップされる、「フッテージ」という短編動画の調査。
「フッテージ」のヒントを求め、ケイスは日本へ飛ぶ…
舞台は、ほぼ現在。
「電脳三部作」「橋三部作」、そして「ビゲンド三部作」作品が進むと現代に近づくのが興味深い。
ただ少しずつサイバーパンク感が薄れ、ハードボイルド感が強くなってくるが、それでもやはりギブスンは面白い。
この作品は、以前このブログでも紹介したことがある。
パターン・レコグニション
ウィリアム・ギブソン
スプーク・カントリー
「ビゲンド三部作」の第二弾。
ロック・バンドの元ヴォーカル、ホリスはバンドの解散後ジャーナリストの道を模索していた。
そこにビゲンドが創刊する新雑誌の取材記事依頼がくる。
取材を進めるうち、ホリスはある事件に巻き込まれていく…
ギブソンお得意の（？）三人の主人公による三つの話が、最終的にひとつにまとまるという物語。
データのやり取りにiPodを使っているのが、時代といえば時代で興味深い…
スプーク・カントリー
ウィリアム・ギブソン
まとめ
現時点で邦訳で読めるウィリアム・ギブソンの作品は、共著も含めてすべてKindle化された。
しかし「ビゲンド三部作」といいながら、第三部の「ゼロ・ヒストリー」は未だKindle化どころか、邦訳もされていない。
またAmazonプライムビデオで、「ペリフェラル」として実写ドラマ化された「ジャックポット三部作」も邦訳されていない（ドラマシーズン2は諸般の都合で中止になったのは残念…）。
これまでの作品を翻訳していた、黒丸尚氏や浅倉久志氏が亡くなられたことも、理由のひとつかもしれない。
ただ他にも翻訳家はいるはずなので、ぜひ続刊を期待したい（それにしても表紙絵が同じような単調なデザインになっているのは残念。出版社の壁があるとはいえ、単行本の表紙絵が使えれば良いのに…）。
また、ここまでの作品の多くは、日本や日本人、日本製品が多く登場する。
ホサカやオノ・センダイなど、和名を冠したギブソンオリジナルのメーカーやガジェットも登場している。
それくらい当時の日本は、ネット・ガジェット先進国、サイバーパンクな国だったのだ。
今は、あらゆる意味で後進国になってしまった。
今後ギブスン作品で、日本が登場することはないのかもしれない…
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