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遂に刊行!村上春樹の新潮社作品が電子書籍(Kindle)化!


講談社や文藝春秋社の村上春樹作品は、次々と電子書籍化(Kindle化)されている。
しかし新潮社の作品は、どういう理由かKindle化されていなかった。

しかし2020年末になって、ようやくKindle化されることになった。

新潮社作品は大作が多い!

今回Kindle化されるのは、短編集が「螢・納屋を焼く・その他の短編」と「神の子どもたちはみな踊る」、それに「東京奇譚集」。
長編は「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」「1Q84」「騎士団長殺し」。

長編はいずれも文庫本にして数冊に及ぶ大作だ。
一番短い「世界の終りと〜」と「海辺のカフカ」で2冊、「ねじまき鳥クロニクル」が3冊、「騎士団長殺し」が4冊、「1Q84」はBOOK1~3がそれぞれ上下で、実に6冊に及ぶ。

これらがKindle化され、iPhoneで手軽に全冊持ち運べるようになった。

オススメは「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」

個人的なオススメは「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」。

村上作品初期の代表作のひとつ。
1985年に村上春樹初めての書き下ろし作品として、新潮純文学特別書き下ろしシリーズの一冊として刊行された。

初めての新潮社からのオファー、初めての書き下ろしということで村上春樹は悩み、あろうことか講談社の担当者に相談したという。
すると担当者は「あれはとても良いシリーズだから、ぜひお受けなさい」と答たらしい。
なんとも良い時代だ。

元になっているのは、幻の作品(?)「街と、その不確かな壁」。
「文學界」1980年9月号に掲載されたこの中編は、「1973年のピンボール」が芥川賞を受賞した場合の、受賞第1作として書かれたという。
結局「1973年のピンボール」は芥川賞を受賞することはなく、この後に書かれた「羊をめぐる冒険」は長編ということで、村上春樹は芥川賞の対象外となった。
村上春樹自身、「あれは失敗」であり「書くべきじゃなかった」と語っており、その後単行本にも全集にも収録されていない。
「自分の目が黒いうちは、単行本化するつもりはない」ともいっている。

「世界の終りと〜」は、いろんな小説の影響を受けているのではないかと、個人的には考えている。
東京の地下にある “やみくろ” の神殿はH・P・ラブクラフトのクトゥルー神話を思わせるし、 “計算士” の “シャフリング” はまるでウィリアム・ギブソンの短編「記憶屋ジョニー」だ。

そんな初期村上春樹の集大成、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を未読の方はぜひ。
僕もこれを機会に、何度めかの再読をする予定だ。