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現金払いに優位性はないのか!? 来たるべきキャッスレス時代に備えて現金の「匿名性」を考える


現在、サイフを持たない生活について試行錯誤中だ。

サイフを持たない生活、その後…

したがって、100%キャッシュレスを目指していることに間違いはない。

では、現金払いに優位性、利点はまったくないのだろうか。
そんなことはない。
極めて重要な優位性がある。
それは「匿名性」だ。

クレジットカードや電子マネーは個人情報に紐付いている!

クレジットカードはもちろん、電子マネーの大半は、登録時に氏名・生年月日・住所・電話番号・職業などの個人情報が必須だ。
場合によっては、免許証やパスポートなどの身分証明書のコピーを必要とすることもある。

したがって、クレジットカードや電子マネーの使用時に、誰がどこで、何年何月何日何時何分何十秒に何を購入、あるいは飲食したか、もしくは交通機関のどこからどこに移動したか、個人情報と紐付けられてサービス運営会社にすべて記録されている。
このデータは、少なくとも現時点では各運営会社が個別に保管していて、共有されることはなさそうだが、当局の要請があればすべて回収され、ひとつのデータとして用いられる可能性もあるだろう。

また、先ごろ導入されたマイナンバー制度。
すでに勤務先に提出している人もいるはずだ。
さらに将来的にクレジットカードや銀行口座などとも紐付けされるようなことがあれば、購入履歴や移動履歴に加えて、収入や預金残高まで、個人情報のすべてが当局に一元管理される、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」のような未来があるかもしれない…

やがて来るべき世界!?

僕の大好きな小説のひとつ、伊藤計劃の「虐殺器官」に、こんなシーンがある。

 ルツィアがジーンズから財布を出したので、ぼくはびっくりした。ここ数年、財布なんてものにはお目にかかったことがなかったからだ。さらに驚いたのは財布から紙幣を取り出したことだ。ルツィアはその紙幣をボーイにわたす。チップ。認証による支払いが市場を支配してから、すっかり消滅してしまった風景だった。

【虐殺器官 第三部】

特務機関の “ぼく” が、追跡しているテロリストの情婦(?)のルツィアと、アンダーグラウンドの酒場でのシーンだ。
近未来のこの世界では、IDカードですべての支払や交通機関の使用ができるので、現金のやり取りをしていることに驚いている。
そんな “ぼく” にルツィアは、こう説明する。

「追跡されないお金、ってこと。だからチェコ政府もユーロ政府も、ほんとうはこういうの目の上のタンコブで、どうにかしてしまいたいはず。でも非合法化する法案はいまのところ国会を通過してないわ。どこかで人々は、情報社会に対するバランスをとりたがっているのね」

【虐殺器官 第三部】

合法的とはいえ、アンダーグラウンドで前時代的な酒場、さぞかし怪しい人ばかりかと思いきや…

ぼくは店内を見渡した。よく見ると、ぼくらより年上の人間たちがそこそこいる。お前は誰だ、お前は誰だ、と世界が四六時中ひっきりなしに自己証明を要求しなかった時代が、骨身に染みている年代の人々だ。そんな客のなかにいるひとりが、こちらに向かって手を振っていることに、ぼくははじめて気がついた。紺の仕立てのいいジャケットを自然に着こなし、タートルネックのセーターを着ている。

【虐殺器官 第三部】

この酒場に集まっているのは、未来の僕たちかもしれない…

まとめ

自分の行動を秘匿したいのであれば、現金を使うことは有用だ。
購入や飲食、交通機関も切符を現金で買えば、個人情報に紐付けられたデータが残ることはない。
レジや駅、その他各所に設置された監視カメラである程度の追跡はされるが、少なくともデータとして長期間(永久に!?)保存されることはないだろう。

とはいえ、ここまでの管理社会は、少なくとも当面は来そうもない。
ふつうに生活する上では、便利さを放棄してまで匿名性に徹する必要はないだろう。

気になるようであれば、複数のクレジットカードや電子マネーを使い分けるのも、ひとつの方法ではある。

僕が2種類の交通系ICカード「PiTaPa」と「Suica」を使い分ける2つの理由

ただし、いつ “そういう” 時代がやってくるかは分からない。
その足音には耳をすませておく必要はある。