おかげでここ数日、寝不足だ。
最近は本を読むたびに睡魔に襲われていたんだけど、この小説は逆に読み進めるたびに先が気になり、目が冴えてしまった。
これを解消するには、この小説を読み終えるしかない、ということで、もったいないけど一気に読んでしまった。
藤井太洋の最新作「ビッグデータ・コネクト」だ。
藤井太洋
セルフ・パブリッシング(主にネットによる自費出版)で面白い小説がKindleにある、とネットの情報で知ったのが、藤井太洋の「Gene Mapper」だった。
Taiyo Fujii
サイバーパンクっぽいんだけど素人が書いた小説なんでそれなりだろう、という気持ちで読み始めたんだけど、良い意味で裏切られた。
ちゃんと商業小説として成立しているのだ(上目線失礼)。
こんな小説がセルフ・パブリッシングで読める時代になったんだな、と感慨に耽っていると、すぐに増補改稿され「Gene Mapper -full build-」として早川書房から出版された。
まだまだ書籍出版は、出版会社が牛耳ってるんだね…
ビッグデータ・コネクト
極近未来というのか、数年先の現代を舞台とした警察小説だ。
PC遠隔操作ウイルスを作成・配布したとされる重要参考人が、証拠不十分で釈放されるところから物語は始まる。
その2年後、滋賀県大津市に建設中の官民複合施設のシステム設計・開発者の誘拐事件が発生する。
物語は2年前のPC遠隔操作ウイルス事件と絡み合いながら、思わぬ方向に進んでいく…
PC遠隔操作事件や某カードの個人情報問題、マイナンバー制度、街中に設置された監視カメラ、マスコミの偏向報道、IT企業のブラック体質…
現実に起こった事件や社会問題、個人情報にまつわる事象ががテーマだ。
ジャンルとしてはミステリー、警察小説になるのだろうが、パソコンやスマートフォンなどガジェットやウェブの扱いがリアルなので、藤井太洋ならではのサイバーパンクな味付けも感じられる。
文章も軽くもなく重くもなく、適度な密度で読み応えもある。
こんな小説をいきなり文庫本で出版して大丈夫か、と思うくらいだ(僕はKindleで読んだけど…)。
どちらにしてもジャンルを超えて、多くの人に読んでもらいたい小説だ。
物語の軸となるハッカーが、まるで九十九乱蔵っぽくなっていたのが、チョット?だったんだけど…
まとめ
個人情報の管理は誰がするのか?
パソコンやスマートフォンが日常的に誰でも使える今だからこそ、ぜひこの本を読んで考えたいところだ。
もうすでに、この物語のようなことは始まっているのかも知れない。
まぁ、そんな難しいことは別にしても、とても面白い小説だった。
久しぶりに小説が持つ醍醐味を満喫しました。
[文中敬称略]