一時期、夢中になって読んでいた本がある。
半村良のSF伝奇小説だ。
その代表作ともいえる3作が、AmazonでKindle版が半額になっている。
半村良とは
小松左京や筒井康隆、平井和正などと並んで、日本SF創世記を支えた作家の一人。
映画化もされた「戦国自衛隊」が有名。
戦国自衛隊
Amazonプライムビデオ
伝奇SF小説というジャンルを開拓し、後に述べる作品群を執筆した。
1975年に直木三十五賞をSF作家として初めて受賞したが、受賞作「雨やどり」はSF作品ではなかった。
雨やどり
半村良
石の血脈
失跡した妻を探すエリート建築家の隅田、展示会から消えた壺の謎を探るカメラマンの伊丹。彼らはやがて不可思議な事件に巻き込まれていく…
古代アトランティス、サンジェルマン伯爵、巨石信仰、吸血鬼、狼男…
伝奇小説の有名キーワードや人気キャラクターが、てんこ盛りの王道伝奇小説。
さらに半村良お得意の(?)、官能小説顔負けのエロス描写もある。
多方面で楽しめる作品だ。
半村良にとっては、初の書き下ろし長編小説。
これまでSFマガジンなどに数編の短編は発表しているが、実質的にはこれが出世作といって良いだろう。
刊行が1971年というから、半世紀前の作品。
確かに時代を反映して少し古臭い部分もあるが、今読んでも十分に面白い。
今回紹介する3作品の中で、どれか1つとなれば、僕はこの作品を勧める。
産霊山秘録
特殊能力を持つ “ヒ一族” は、御鏡・依玉・伊吹の3種の神器を駆使し、影から帝を保護する集団…
本能寺の変、関ヶ原の戦い、幕末、太平洋戦争時から現代(といっても1970年代?)と舞台を変えながら、その背後で暗躍する一族を描いている。
明智光秀や徳川家康、坂本龍馬や新選組など、各時代の人気キャラクターも登場する。
1972年にSFマガジンに連載され、1973年に単行本刊行というから、こちらも半世紀前の作品。
ただSF時代小説的な側面が強いから、石の血脈ほど古臭さを感じないかもしれない。
妖星伝
神道に反する鬼道を駆使し、歴史の裏で暗躍する超能力集団 “鬼道衆”。彼らの最終目的は、太古の昔に自分たちを生み出した “外道皇帝” の復活…
こちらも基本的に歴史SF伝奇小説だが、ある意味SF色が一番強いかもしれない。
宇宙で生命は稀な存在であるにも関わらず、多くの生命が存在し、それらが互いに喰らいあっている醜い星地球。
これは “外道皇帝” が設置した、何らかのメッセージである…
人間はなぜ生まれなぜ死ぬのか、死とはなにを表すのか、霊とは宇宙とは…
哲学的な作品でもある。
6巻までは順調に刊行されたが、続く7巻は10年以上の間をおいて、ようやく完結したという曰く付きの作品。
長いが文章はこなれており、読みやすい。
まとめ
▲ 未だに処分せずに置いている半村良の文庫本。「石の血脈」と「産霊山秘録」は、大切なハヤカワ文庫JA版。講談社版「妖星伝」はKindle版を購入したし、そろそろ処分しても良いかな…
石の血脈や産霊山秘録は、元々は厚い一冊の文庫本として刊行されている(長いので現在は上下分冊されている)。
妖星伝は、後に3冊に合本されたが元々全7冊。
これくらいの本を持ち運ぶのは、重くて不便。
しかしKindle版であれば、ふだん携帯しているスマートフォンやタブレットで持ち運ぶことができる。
自宅ではもちろん、移動中の車内やお気に入りのカフェなど、外出先でも気軽に読むことができる。
良い時代になった。
Kindle版が半額になっているのは、祥伝社文庫版のみ。
妖星伝は祥伝社文庫版だけだが(たぶん…)、石の血脈や産霊山秘録は他の出版社版もある。
それらは半額になっていないので注意が必要だ。
半額セールは期間限定。
年末年始の冬休みにSF伝奇小説を耽溺してはどうだろうか。
[文中敬称略]
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