以前、村上龍作品はなぜKindle化されないのかという投稿を、このブログにした。
▷ 村上龍の小説は、なぜKindle化されないのか!?【追記あり】
しかし2019年12月4日、突然(?)村上龍22作品がKindleストアで配信が開始された。
いずれも読んで損はない名作ばかりだが、個人的に特にオススメしたい作品を、厳選して3作品紹介しておこう。
限りなく透明に近いブルー
いわずと知れた村上龍のデビュー作。
第19回群像新人文学賞受賞作で、第75回芥川賞を受賞作だ。
芥川賞選考会でも賛否が別れ、長時間にわたる討議の結果、賛成多数により受賞が決定したという問題作でもある。
選考委員の一人、吉行淳之介にして「因果なことに才能がある」と言わしめたことは有名だ。
村上龍ファンのみならず、読書家にとっても必読の一冊といって良いだろう。
コインロッカー・ベイビーズ
村上龍の初期代表作のひとつ。
当時頻発していたコインロッカー乳児遺棄事件が題材。
コインロッカーという胎内から生まれた二人の少年、ハシとキクの成長を描く。
そこにワニを飼う少女、アネモネが絡み物語は進む。
この少年二人、少女一人の三人で物語が展開するパターンは、後の「愛と幻想のファシズム」でも使われている、当時の村上作品のディフォルト設定でもある。
改行が少なく、ページを埋め尽くす密な文体で、時に難解と評されることも少なくない。
しかし村上龍を語るうえで外すことができない作品であることは確か。
決して読後感は良くないが、読破後の達成感と不思議な高揚感は、村上龍作品でもトップクラスといって良いはずだ。
そして何よりも、タイトルがカッコイイ(!?)。
希望の国のエクソダス
もし村上龍作品を読んだことがない人に一冊薦めるとしたら、僕は迷わずこれを選ぶだろう。
不登校の中学生集団が起業し、日本から実質的な独立を目指すという、今起こってもおかしくない物語。
これが20年以上前に書き始められた作品とは思えない内容だ。
“この国には何でもある。だが、希望だけがない。” というこの作品を的確に表現した文言は、各所で引用される名言でもある。
前述2作品にある村上龍特有のエグい表現もないので、グロテスクな表現が苦手な人や、村上龍作品初心者にも比較的読みやすいはずだ。
まとめ
Apple Booksにはない「コインロッカー・ベイビーズ」も発売されるから、今後も順次作品がリリースされるのだろう。
個人的には「愛と幻想のファシズム」や「希望の国のエクソダス」の続編(主人公が同じだけで物語のつながりはないが…)である「オールド・テロリスト」のリリースも期待したい。
▷ 久しぶりに紙の本を読むとKindle(電子書籍)のありがたさがよく分かる…
あと「五分後の世界」や「ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II」、「半島を出よ」など幻冬舎作品もKindle化して欲しい。
いずれにしても龍・春樹、両村上作品をKindleやiPhone(スマートフォン)で常に持ち歩き、いつでもページを捲ることができる素晴らしい時代がやってきた。
ただ新潮社の村上春樹作品(小説)がKindle化されていないのが気になる。
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」や「ねじまき鳥クロニクル」、「海辺のカフカ」、「1Q84」など名作揃いなので、ぜひKindle化して欲しいものだ…
[文中敬称略]
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