テレワークやオンライン授業…
ほんの半年前までは少し先の話と思っていたことが、COVID-19の蔓延によって一足飛びに現実のものとなった。
今後、世界はさらに未来に向かって変容していくのだろうか、それとも元に戻るのか…
「WIRED(ワイアード)VOL.37」は、そんなCOVID-19後の世界をSF的見地から模索・想像している。
WIRED(ワイアード)VOL.37
『WIRED』日本版編集長 松島倫明によると、今特別号は “パンデミックという大災害禍の初期に企画をスタートさせ、緊急事態宣言が東京で解除された翌日に校了を迎えた” という。
さらに “その日まで、編集チームはおろか本誌に登場する誰一人とも実際に顔を合わせることなく、すべてリモートで編まれたもの” であるらしい。
すでにこの時点で、本誌はCOVID-19後の新しい雑誌の形であるのかもしれない。
ウイリアム・ギブスン INTERVIEW BY 齋藤精一
WIRED(ワイアード)VOL.37を購入した第一の理由がこれだ。
ウイリアム・ギブスンはこのブログでも何度も紹介しているとおり、僕が好きな作家のひとり。
そんなギブスンが今の世界をどう見ているのか、とても興味がある。
このインタビューの副題は「HAVE YOU EVER IMAGINED THE22nd CENTURY?(22世紀を想像したことがあるか?)/ なぜ “22世紀” は見当たらないのか」だ。
ただ、このインタビューでいえることは、いつもギブスンの発言(文章)は分かりにくい、ということ。
1度や2度読んだくらいでは、僕のような読解力がない人間には、結局何を言わんとしているのか理解できない。
何度も読み返し、理解を深める必要がありそうだ…
BRAVE NEW WORLD
既存の概念や素形、行動が通用しないであろう、COVID-19後の世界。
そんな新しい世界を、7人のSF作家が準備(=プロトタイピング)した7篇の物語。
実装せしめるのは、僕たちかもしれない。
藤井太洋 / 滝を流れゆく
藤井太洋はギブスンと並んで、僕が好きな作家のひとり。
藤井太洋作品の特徴は、いつも “今” の延長線上にある世界観にある。
だからCOVID-19後の世界を描くのに、藤井太洋以上の適任はいないだろう。
この短編も、安定の藤井作品。
藤井太洋自身の故郷、奄美大島を舞台に抗体タトゥー、四足歩行ロボット、外骨格ウェア、遺伝子編集など、藤井作品の特徴をすべて詰め込んだような作品だ。
藤井太洋
柞刈湯葉 / RNAサイバー
自己増殖し続け、ついに本州の99%まで広がった横浜駅を舞台に、詳細な設定と圧倒的な想像力の名作(迷作?)「横浜駅SF」の柞刈湯葉(いすかりゆば)。
防疫のため米国が国境封鎖されたため動きがとれなくなった “私” 。
暇つぶし感覚で、以前耳にした “RNAだけを使って増殖する原始生命体” を求め南太平洋に浮かぶベタニア島に向かうのだが…
本作も独特の語り口で物語は進む。
SFの懐の深さを感じさせる作品だ。
良くも悪くも(もちろん面白い!)、柞刈節だといっておこう。
まとめ
「虐殺器官」や「ハーモニー」など、わずかな作品(いずれも名作だ!)を残して早逝した伊藤計劃が存命なら、間違いなく「BRAVE NEW WORLD」に名を連ねていたはずだ。
伊藤計劃はCOVID-19後の世界を、どう描いていただろうか。
そんなことを考えるのは、僕だけではないはずだ。
今後、COVID-19よりさらに強力(凶悪?)なウイルスが発生・蔓延する可能性もある。
想像力と適応性、テクノロジーを武器にして、このSF的世界を僕たちは、タフにワイルドに生き抜いていかなくてはならない。
[文中敬称略]
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