2017年6月16日、Amazonプライムビデオで園子温監督作品「TOKYO VAMPIRE HOTEL」が公開された。
ほんとうは、これについて書きたいところだが、園子温監督で吸血鬼(ヴァンパイア)ものということで、スプラッター色が強く好き嫌いが分かれそうなので、やめておく。
その代わり、というわけではないが、僕がオススメする日本の吸血鬼(ヴァンパイア)小説を紹介しよう。
TOKYO VAMPIRE HOTEL
Amazonプライムビデオ
石の血脈
言わずと知れた日本の吸血鬼小説の金字塔。
吸血鬼のみならず、狼男やサンジェルマン伯爵、アトランティス、オリハルコン、巨石信仰など、東西の伝奇小説のキーワードをすべて(!?)盛り込んだ傑作だ。
そして半村良お得意の、男女の愛をエロティックに描く悲しいラブストーリーでもある。
吸血鬼ファンのみならず、伝奇小説やSF小説としてだけでなく、日本文学としても必読の一冊だ。
イコノクラスム!
なお「石の血脈」には、短編「赤い酒場を訪れたまえ」という外伝もある。
これも必読だ。
吸血鬼ハンター
菊地秀行といえば、スプラッター色が強い伝記ホラー小説イメージがあるが、これは吸血鬼を扱いながらファンタジー色が強い。
超未来、地球は吸血鬼が勢力を広げ、辺境に追いやられた人類は細々と抵抗を続けている。
生贄を求め人類に襲いかかる吸血鬼と唯一互角に戦えるのが、吸血鬼と人間のハーフ “ダンピール” のDだ。
人間にも吸血鬼にも受け入れられない、美剣士Dの孤独で壮絶な闘いを菊地秀行が活写する。
そしてなんといっても、天野喜孝の美しい表紙絵・挿絵も見どころのひとつだ。
ヴァンパイヤー戦争
吸血鬼や鬼、ムー大陸、古代民族など伝奇小説のキーワードのみにとどまらず、国家論や文明論、光と闇の善悪二元論まで話が及ぶのは笠井潔ならではだ。
初版本のあとがきで、作者自身が白状(?)しているように、この作品は先に紹介した「石の血脈」や僕が大好きな平井和正の「ウルフガイシリーズ」の影響を受けている。
そこに笠井潔得意の哲学や思想を加味して、独特なSF伝奇小説に仕上がっている。
ちなみに「ヴァンパイヤー戦争」は、同じ作者の「巨人伝説」と「サイキック戦争」と世界観を同じにし、コムレサーガという一大叙情詩になっている。
って、「ヴァンパイヤー戦争」は今、古書でないと読めないの!?
別巻の「九鬼鴻三郎の冒険」はKindle化されてるみたいだから、早くこっちもKindle化して欲しいな…
まとめ
吸血鬼や狼男は西洋ホラー小説のスターだが、日本の伝奇小説に組み込まれると、また違ったキャラクターになって興味深い。
どれも単純な化物・怪物扱いではなく、どこか悲しみがあり、時にはヒーローになって人間を守ってくれるのも、日本人特有の判官びいき的なところがあるのかもしれない。
僕も吸血鬼や狼男は大好きだ。
[文中敬称略]